君が笑ってくれるなら
「いえ、そんな……」
……雨が降ってる。今は小降りだが、予報では本降りになると――遠慮するな
結城さんはキャリーバックに手を掛け、歩き出す。
定時、18時をまだ15分ほどしか過ぎていない。
社屋ビルのロビーは、人も疎らだ。
「あの……」
言い掛けて、結城さんの肩が忙しく上下しているのに気づく。
――結城……さん
前を歩く結城さんの張り詰めたような後ろ姿に、こちらまで緊張する。
意地を張らずに、酸素吸入器を装着すればいいのにと思う。
結城さんは駐車場に着いて、車に乗り込むと「乗って」と手振りをし、鞄から酸素ボンベ缶を素早く取り出し、口に当てた。
喘ぎながら数分、酸素を吸って、画用紙に更々と文字を書く。
――みっともない所を見せてすまない
後部座席に、所在無さげに座ったわたしに向ける。
……雨が降ってる。今は小降りだが、予報では本降りになると――遠慮するな
結城さんはキャリーバックに手を掛け、歩き出す。
定時、18時をまだ15分ほどしか過ぎていない。
社屋ビルのロビーは、人も疎らだ。
「あの……」
言い掛けて、結城さんの肩が忙しく上下しているのに気づく。
――結城……さん
前を歩く結城さんの張り詰めたような後ろ姿に、こちらまで緊張する。
意地を張らずに、酸素吸入器を装着すればいいのにと思う。
結城さんは駐車場に着いて、車に乗り込むと「乗って」と手振りをし、鞄から酸素ボンベ缶を素早く取り出し、口に当てた。
喘ぎながら数分、酸素を吸って、画用紙に更々と文字を書く。
――みっともない所を見せてすまない
後部座席に、所在無さげに座ったわたしに向ける。