気になる彼への恋心
それは謂わばレアな光景。
四六時中マスクをしている彼がマスクをしていない。
心底不機嫌な顔を浮かべているのは、何かあったのだろうか。
それにしても、やはりマスクの下の素顔は美少年だ。
彼が席に戻るまで見送り、後を追うように、それでもわざとらしくないように私は自分の席に着いた。
深く息を吸って吐き出す。それを繰り返した後にぎゅっと拳を握りしめた。
「た、高瀬くん。ま、マスク、どうしたの?いつもしてるのに」
詰まり詰まりになりながらも、問いかけた。
ここで問いかけた自分を誉めてあげたいけれどグッと我慢をして、彼が後ろを向いてくれるのを待った。
「あー……」
なるべく隠したいのか何故だか口元にてを宛てている。
「マスクテーブルに置いてたら、コップに手当たって水ぶっかけられた」
そう早口に答えると、さっさと彼は前を向いてしまった。
「そうなんだー」と、何とか返したものの何となく素っ気ない彼に少しだけ悲しくなった。