気になる彼への恋心
彼がどれくらい黒板を見れていないのか分からないが、写している間に教室からは人が少なくなっていく。
あの先生は沢山黒板を書き込むから写すほうも大変だ。
「た、高瀬くん、は、目が悪いの?」
写している間は振り向かないだろうと話しかけてみる。案の定彼はシャーペンを動かし続けている。
それだけで、少しだけホッとする。
「ちょっとだけね」
顔を見られなければ案外恥ずかしい気持ちは薄れて、私は詰まりながらも調子づいて話しかける。
「他の、授業とかは見えるの?」
「んーー、見えないとこもあるけど他の授業は別にいいし」
もしよかったら貸すよ。と言いかけるも、私は首をかしげた。何故他の授業はいいのだろうか。
数学も、日本史も同じ授業。答えがある、解説がある。見えないとこも必要な筈だ。
それなのに、何故この古典は……
「ああ、やっぱり古典好きなんだ」
閃いてから口に出すまでは早かった。しかし、脳が理解するのは遅かった。
「やっぱり?」
その言葉に反応するのは当たり前だろう。
私は言わなくてもいいことを言ったのだ。