気になる彼への恋心


彼がノートを書き終わる頃には、皆帰っていて、気がつけば私と彼の二人きりになっていた。

外は少し薄暗くなり、教室が夕暮れに染まる。

ただ二人で居て、ポツリポツリと話す短い時間は幸せと呼ぶに等しかった。

それだけに、終わるには少々寂しい。


「……」


どちらにしたって、上手くは喋れないのだろうけれど。

返してもらったノートを詰めながら、前の席を見る。

彼も私と同じように鞄にノート類を入れて、帰り支度をしている。

一緒に帰りたいなぁ。とか、徒歩通学なのかなぁ。とかぼんやり考えていた。

その間に、ガタッと立ち上がり、鞄を肩に掛ける彼。


「あ」


そうして、不意に一音吐き出す。

思わずビクリと肩を跳ね上げさせてしまった。



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