気になる彼への恋心


またやってしまった。私は何度失敗を繰り返せば成長できるのだろうか。

彼の前だと上手くいかない。上手く、普段通りにしたいと思っているのに。

普段通りにいかないのは、彼の前だからか。

じわり、と視界が歪み慌てて俯く。

ああ、このまま消えてしまいたい。


「あ、あの……っ!」

「……すごい。俺も同じ事言おうとしてた」


間違えたと言った言葉をなかった事にしようとして、降ってきたのは彼の優しい言葉。

零れそうだった涙は驚きで止まり、跳ねるような勢いで顔を上げた。

私が急に顔を上げたからか、彼は驚いたらしく肩を揺らす。次いで、反射とも取れる動作で手の甲で口元を隠した。


「びっ、くりした……」


呟いて彼は視線をそらす。


「ご、ごめんなさい」


落ち着きがない自分の行動に情けなくなりつつも、


「や、大丈夫。……行こ」

「うん……!」


彼ともう少しだけ一緒に居れることに、私は確かな喜びを感じていた。


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