気になる彼への恋心
幸い、彼は悪い方には取らないようで、私の言わなくてもいい疑問に答えくれた。
「プリントとか回すときにチラッと見えたノート、いつも綺麗だから」
まさか、ノートを見られているとは思わなかった。別に困るわけでも嫌なわけでもないが、彼はプリントを渡すとすぐに前を向くから意外だった。
ともあれ、聞いておいて貸さないという訳にはいかない。
何よりこのチャンスを逃すわけにはいかないという意志が、混乱してもなおしっかりとあったから、わたわたと慌ててノートを手に取った。
「き、汚い字ですが!よ、よかったら!」
震えた声で両手でノートを持って差し出す彼は私をどう思ったのだろう。
変な子だと思われただろうか。そう思うと泣きたくなるけれど、
「ありがと」
その、長い睫毛を携えた目が細くなったのは笑ってくれたのだと思いたい。悪い感情を抱いてはいないと。