Hospital waste
改めて、アレックスはシエラの方を振り返る。

「怪我はないか」

「う、うん、大丈夫…」

不気味な男に攫われ、命の危険を感じていたのだろう。

快活なシエラが、顔面蒼白となっている。

余程怖かったに違いない。

「もう大丈夫だ。早くここから出よう」

シエラの背中を押し、アレックスは歩き始める。

とはいえ、この集積場の位置も構造も分からない。

何処に進めば出口はあるのか。

「ね、ねぇアレックス…」

後ろを歩くシエラが不安そうに呟いた。

「時々変なもの踏むんだけど…何かブヨブヨしたもの…それに何かが腐ったような臭いもするし」

「気にしない事だ。間違っても確認しようなんて考えるな」

『それ』を悪戯に目の当たりにしてトラウマになるよりは、いっそ無視して歩いた方がいい。

アレックスはそう考えていた。

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