Hospital waste
アレックスが我に返ったのは、拳銃の撃鉄がカチンと音を立てた時だった。

弾が出ない。

残弾がなくなった!

まずいと思ったが時既に遅し。

巨人の剛腕が、アレックスを薙ぎ払う!

声もなく吹き飛ばされるアレックスの体。

下水道の側壁に叩きつけられ、そのまま汚水の中に突っ伏す。

乱れた呼吸で、何度か咳込む。

口の中に広がる血の味。

息を吸い込もうにも、痛みが邪魔をして上手くできない。

骨が折れたのか、臓器を損傷したのか。

体の中の痛みがメチャメチャで、どんなダメージを受けているのか自分でも把握できない。

そんなアレックスに憐れみをかける事なく、巨人はゆっくりと近付いてくる。

「アレックス!来る!来るよ!」

悲鳴のような声を上げるシエラ。

何とか身を起こそうと踏ん張るアレックス。

しかしどうする?

立ち上がった所で、彼にはもう拳銃の弾がない。

愛用のナイフで接近戦を挑むには、あまりにも不利な相手だった。

ここまでか。

アレックスの脳裏で、死が強くイメージされる。

< 89 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop