線香花火
「あ!…ご、ごめん!」

パッと私を自由にした空海君は

途端に顔を赤くした


私はまだドキドキしていて

たぶんお互いに顔が真っ赤だと思う


恥ずかしくて思わず俯いてしまった

「…じゃ、じゃあね

また明日学校で」

横を通る足が見える

それが見えなくなると

微かに聞こえる足音が聞こえなくなるまで

ずっとその場に俯いて立っていた


そっと顔を上げて

空海君がいなくなったことを確認すると

私もゆっくりと歩き出した


『でも、なんで私を抱きしめたんだろう』

ぽつりと漏れたひとりごと


優しい空海君は

きっとどんな女の子でもそうしたのだろう

でもそう思った瞬間

胸がチクッと痛み

嫌な感情が湧き上がってきた


この気持ちは……なんだろう
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