線香花火
愛深莉さんがこちらを見たまま動こうとしないためか

空海君がこちらを振り返ろうとした

すると愛深莉さんはくるっと空海君の方へ振り返り


「そういえばぁ

えみりぃ、すっごく美味しいケーキがあるカフェ知ってるのぉ♪

だから早く行こぉ??」


空海君を引っ張るようにして走り出した

驚いた空海君はこちらを見ることなく前へ向き直り

愛深莉さんに手を引かれながら走り去っていった


二人の後ろ姿はとても仲が良さそうで

まるで恋人同士のようだと思った



二人が見えなくなると

途端に足に力が入らなくなり

私はその場に膝をついた


ズキッ ズキッ

胸の痛みが増し

モヤモヤとした黒い感情が心の中で渦を巻く


こんな気持ち、私は知らない


苦しくて苦しくて

私は暫くその場から動くことができなかった
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