線香花火
その時
ザッ……ザッ……ザッ……
私の後方から
まるでアスファルトを靴で擦るように
強く地面を蹴りながら走ってくるような足音が聞こえてきた
道端で立ち止まって
大粒の涙を流す少女なんかを見たら
誰であれ驚くに決まっている
慌てて涙を拭い取り
歩き出そうと一歩を踏み出したその時
「───香咲さんっ!!」
『……え……』
ピタッと足が止まる
振り向かなくても誰か分かる
さっきまで同じ声を聞いていたのだから
告白をしたばかりの
……私の想い人