線香花火
「ハァ……やっと、見つけた……」

振り返って見た彼の顔には

汗がいくつも流れていて

目に見えて分かるほど疲れていたが


その口元はしっかりと笑っていた


『...な、なんでここに……?』


声が震える


“ やっと見つけた ”って

私を探してくれていたの?

どうして?

何のために?

...もしかしてわざわざ探してまでフりにきたの?

愛深莉さんはどうしたの?

どうして……どうして……


嫌な考えが頭を過ぎり

疑問が頭の中を飛び交い

訳が分からなくなってきた私に


空海君は呼吸を整えた後こう言った

「瑚蝶には申し訳なかったけど帰ってもらったんだ」
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