ブルーウィンズ~ラブソング嫌いなボーカリスト~
美紀は心配そうな眼差しであたしを見てくる。
「そ、そんなにしてた?
ごめんね、ちょっといろいろあって」
あたしは持っていた箸をケースに戻した。
食欲ないし、お母さんには悪いけど閉まっちゃおう。
頭の中で一番の気がかりはあたしが悪くしてしまったみんなの空気を今は気にしないでやってくれてるかどうか。
でも、様子を見に行く勇気はどこにもない。
だからあたしは黙って悩み続けることしかできないんだ。
「言えないことなら無理して聞く気はないけど、でも言いたくなったらいつでも話していいんだからね。
それだけは絶対に覚えておいて」
美紀は『これなら食べれるでしょ』と言ってあたしにキャンディをくれた。
「ありがと。心配かけて本当にごめんね」
美紀に言おうかなと思ったこともあったけど、そうなるとブルーウィンズと面識があることも言わなくちゃいけなくなって……
ブルーウィンズのファンである彼女には、だからこそ言えなかったんだ。