ブルーウィンズ~ラブソング嫌いなボーカリスト~



その夜。



「あたしはこの曲をどうやって歌ったらいいんだろ」



自分の部屋のベッドに座って、目を瞑って思い浮かべてみた。



彼氏がいるわけでもないし……



好きな人がいるわけでも……ない。



だけど、無意識に浮かんで来たのは



……湊くんだった。



なんで湊くん?って思ったけど、



考えたら湊くんはあたしのそばに当たり前のようにいた。



後夜祭でブルーウィンズを見て惹きつけられたのも湊くんの声。



音楽室に2人で残された日、傷つくことを言われた時も



初めてのライブの時に緊張をほぐそうと、あたしのところに来てくれたのも



あたしのために、遅くまで残って特訓して最後まで一緒に頑張ってくれたのも湊くん。



あたしはラジカセにデモテープをセットして、イヤホンを耳に付けた。



< 221 / 303 >

この作品をシェア

pagetop