ブルーウィンズ~ラブソング嫌いなボーカリスト~



「…………」



涙と嗚咽で言葉が出ない。



あたしに何も言わないで、辞めたり、消えたりしないでよ。



早く戻ってきてよ。



本当はあたしがボーカルをやるなんて、不安でしょうがないよ。



なんで辞めたことあたしには何にも言ってくれないの?



「結愛、何にも話さなくていいから落ち着けって。なっ?」



と樹は優しくあたしの頭を撫でてくれてると思ってたら……



グッとあたしの片腕を引っ張って、あたしを抱き締めた。



一瞬、自分がどうなってるのかよく分からなくなった。



だけど、耳元で聞こえる自分のではない心臓の鼓動を聞いて少しずつ気づいた―――。



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