ブルーウィンズ~ラブソング嫌いなボーカリスト~
手に握りしめた結愛の失敗作を見ながら教室まで歩く。
「本当にアイツって、このバンドに入って変わったな」
ただの何にも知らない手伝いだったのにさ、たまたまピアノを弾いてる姿見て
デタラメだけど、でも一度弾き出したら止まらないくらいのアレンジするセンスを持っていて。
そして自分の忘れたい過去を抱え、葛藤しながらも最終的には“キーボードをやる道”を選んだ。
でも、俺が消えると……彼女はまた新しい所に手を伸ばした。
クリスマスイベントの時、どうせみんなで歌うのかと思ったら聞こえたのは女子の声。
その声は俺の中に抱えてたものにまるで光を差すような感じだった。
まだまだな歌い方だけど、涙を溢れさせながら、誰かを思って一生懸命歌う姿に……
歌詞を壊れ物を扱うように大事にしているのもよく分かって
俺ももう一度歌いたいと思った。
自分の歌い方に今まで自分の気持ちはほとんど入れることなく無我夢中で歌ってきた。
だから、あんな風に感情込めて歌えたら、歌うことに対して自分の中で何かが変わるかもしれない、もっと楽しいと感じられるかもしれないと思ったんだ。