油断は大得?!

女湯には先客が二名居たが、気に成らない程広かった。

掛け湯をして身体を洗い、失礼しますと声を掛け、湯船に脚を静かに入れた。

……はぁ。湯船に浸かると、湯船、海、空が一体になる造りだった。

日が沈み始めた。
空がオレンジになり、やがて濃くなり、紅になり、水平線を染めた。
思わず感嘆の息が洩れた。私も、他の二人の方も。
自然と共感を求め顔を見合わせてしまった。

「綺麗ですね〜」

「ええ、本当に」

「来て良かったです。
朝霧の方は朝日と供に霧が立ち込めるようですよ?
そちらも素晴らしいですよね」

「私は一泊ですので、残念ながら見えませんね」

「私もです、残念」

「ごめんなさ〜い。私は連泊しますので、次の日、女湯男湯がチェンジしたら楽しめます」

「それは羨ましいです」

「あ、そろそろ食事の時間になるのでお先に失礼します」

「はい」

二人とも綺麗なご婦人だった、…お忍びかしら。


浴衣に着替えて、今度こそ間違わないようにと、案内図を片手に進む。

……迷った。え?どうして?…。教えてもらった通りにしたのに。
だって見た通り歩いたのよ?
迷いようが無いのに。
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