油断は大得?!
「美波、1時間くらいしたら起こしてくれるか?俺ちょっと仮眠するよ」
直己は今日から休みにするため、昨夜、遅かったみたいだ。
早く終わればうちに来て、そのまま出発する予定だったのだ。
「解った。牛にはならないから、2時間くらい寝たら?」
「ああ、でも、1時間で目が覚めるよ、きっと。癖がついてるから。起きたら風呂だからな?
じゃあ、ちょっと、悪いけど寝る」
「うん、おやすみ」
私は椅子と小さいテーブルのある窓際へと移動した。
お茶とお茶請けを持ってだ。
「……うわぁ、綺麗…。
周りが暗いと、こんなに星が見えるなんて…。
煌めくとはこういう事よね。…綺麗」
散りばめられた満天の星に感嘆した。
直己は、と思い、覗いて見た。
軽く寝息が聞こえる。…よく、眠ってる。
疲れてるのに…。有難う。
窓際に戻った。
また星を眺めていた。
っ!
息を飲んだ。ビックリし過ぎて声も出なかった。
窓の外に支配人が居た…。
「こんばんは、英 美波さん。ここから外に出られますよ」
それは突然の事だった。
半ば強引に手を引かれていた。
「え、あ、あの」
そこには外用のスリッパがあり、庭を散策出来るようになっていた。
「…悪い、寒いだろう?」
「え」
一之瀬はスーツの上着を脱ぐと、スッと私の体を包むように掛けてくれた。
私、なんて無防備な格好で…。
突然のことだったとは言え、上に何も羽織っていない浴衣姿だった。
そんな心許ないことと、寒いことを思えば、上着を掛けて貰ったことは助かったのは助かったけど…。
「…有難うございます」