油断は大得?!
“一之瀬”を後にする。
支配人は何か言いたげに見えたが、仕事中は仕事…。
宿泊のお礼と、またのお越しをと、見送ってくれた。
仲居さん(元女将)が手を振っていた。
いい温泉だったな…。それは良かった。…だけど……ちょっと、何かモヤモヤするものが残ってしまった。
私もだけど、偶々訪れた宿なのに……直己にしてみれば、何か複雑なのかも知れない。
まあ、充分過ぎる程、ヤキモチは妬いている。
支配人があの人だと気付いたから。
あの人…、ただの奇遇だと言って終わらせようとしているのに。なんだか…納得してないような態度を取るし。
こっちは直己と宿泊してる、親戚でも兄妹でもない、それは解ってるはずなのに。
あんなこと……どういうつもりなのか…。
横恋慕なんかしたら駄目に決まってる。
…そんなの苦しいだけなのに。
私も気をしっかり持っていないと…。
イケメンのちょっとした事に、ドキドキなんかしちゃいけない。…。
直己は凄く私の事、解ってくれてる。
良いところも悪いところも、丸ごと受け入れてくれる。大事な人だもの。
揺れたりしない。
何を言われようと、あいつに揺れたりなんか、しないんだから…。