油断は大得?!
ピンポン。
はい?誰?
覗いて確認して見た。
古いマンションだ。共有の通路の明かりが消えていて暗くてハッキリ見えない。
「俺だ。直己」
直己…。
急いでチェーンを外しドアを開けた。
「直己」
「ごめん、遅い時間に連絡もせずいきなり…。
美波?」
玄関先だという事も忘れ、直己に抱き着いた。
「美波?驚かせて済まなかった」
直己が背中をトントンして摩る。
首を横に激しく振った。
「直己…、会いたかったから…、嬉しくて…」
「…とにかく入っていいか?
誰も見てないだろうけど…、ズッとって訳にはな」
「あっ、ごめん。入って」
慌てて離れて、鞄を受け取った。
直己はネクタイを緩めながらリビングへ向かった。
……お酒の匂いがする。…香水も。接待かな…、大変だな直己。
「…どうしたの?いきなりこんな遅くに来るなんて、何かあったの?」
「…いや、…何も無い。ただ、ここのところずっと遅くて、美波とまともな連絡も出来て無いし。…何より俺の充電が切れそうなんだ…。美波」
ソファーに腰掛けた直己が両手を広げた。
私は迷わず腕の中に飛び込んでしがみついた。
「はぁ…、美波も充電切れたのか?」
顔を覗き込まれた。
頷いた。
「はぁ、…熱烈大歓迎だなぁ」
しっかりと抱きしめ合った。
会いたかったのは私だって同じ。来てくれて嬉しい…。