油断は大得?!
受け取りたくはない。親しくならない方がいいに決まってる。
でも、ずっと差し出されたままって訳にもいかない。……餌付けされる訳じゃないから…。言い訳を思いつつ受け取った。
「ではお言葉に甘えて、…頂きます」
…サンドイッチも美味しい。ローストビーフ、食べられるようにフォークも添えられていた。持ち帰りではない。
どちらの気遣いか解らなかったが、一之瀬誉が気を効かせて入れさせた気がした。
隙がない。何故だか、そんな事が自然と出来る男のように思えた。
私の空腹に気を遣える人だから…。それも……解らないか…。取り入るためだと考えたら…。
それに単なる組み合わせに過ぎないのだけれど、ジンジャーエールというチョイスが…なんとも。
これ以上褒めたく無いが、私はお肉にサンドイッチなら、飲み物はジンジャーエールが好きだ…。だから、ベストチョイス…、なのだ。
「…御馳走様でした」
片付けようと立ち上がった。
「ん、いいよ座ってろ、俺がする」
一之瀬誉に空き箱を取り上げられた。
部屋の備え付けのごみ箱に、分別して捨てていた。
「…ごめんなさい、…有難うございました」
「いいや、大した事はしてない。じゃあ、出ようか」
「ぇえっ!?」
「そんなに驚かないで。お宅の課長さんになら、とっくに話を通してある。俺が送りますって…、ま、残念そうにしてたけどね。
確かめたいなら顔出してみれば解る」
半信半疑、会場の中を見渡し、課長を見つけるとOKマークを作られ、頷かれる始末…。
どうやら言ってる事は本当らしい。この人をどういう関係性だと思ったのだろう。
課長を納得させる説明をしたに違いないけど。
ならば。
「一人で帰れます。大丈夫です」