油断は大得?!
一緒に居るなんてありえない。
言っては見たものの、違う目的があったようだ。

「送りたい訳じゃない。ちょっとつき合って欲しいだけだ」

この人の気持ちが解っている以上、一緒に行動する事は駄目だ。
私は嘘をついた。

「この後、直己と会う事にしているんです」

「それが?」

「…だから、帰ります」

「嘘だね。だったらさっき一人で帰るって言った時、絶対そう言ってたはずだ、貴女の性格ならね。
例え、そうだとしても、こうして会えたんだ。
このまま終わらせない。素直に帰す訳が無いでしょ?
恋には駆け引きがつきものだ。
貴女は上手く騙せたつもりでも、そうはいかなかった。この駆け引きは貴女の負けだ。
さあ、行きますよ」

手を引かれて連れて行かれそうになった。
脚を踏ん張って見ても、こんなヒールを履いていては抵抗にもならない。

引く事をやめて壁に押し付けられた。
パチッ。
一之瀬誉のすぐ横に室内の明かりのスイッチが行儀良く並んでいた。

パチッ…パチッ…パチッ。
え?
少しずつ暗くなってくる。
左手は私の顔のすぐ横に、前には一之瀬誉の顔があった。
動けない…。
いや、正確には拘束されている訳ではないから、動けるはず。
でも、動けない…。体がいうことをきかない。
…瞳に囚われているから。

パチッ…。
最後の一つが消された。
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