油断は大得?!
焦りも改心も
くそっ。
……遅いんだよ、あの課長。
俺は渋滞で一向に進まない自分のRVを運転しながら、焦りに焦っていた。
今何時だと思ってるんだ…。
今日は美波から、課長のお供でパーティーに出席する事になっていると聞いていた。
課長にパートナーが居ないから駆り出されたと。
美波で無くても良さそうな話だ。
あの課なら他にも女子社員は居るだろうに。
美波を指名したのはそれなりの理由だろうけど、まあ、あの課長に下心が無いとも思わないが、気の小さい人だから、まず心配するような事はない。
そう、安心していた。
なのに、なんだ?
以前、仕事の付き合いで番号交換していたから知っていたんだが、いきなり連絡して来た。
「椎名さん、今日は英君、お借りしました。
いやー、見惚れるほど綺麗なんで、その…、腕なんか組んで貰いました」
とか言う。話はそれだけで終わるのかと思った。
「僕、送り届ける約束でしたよね。
それがぁ、会場で一之瀬の支配人に会いましてねぇ。何だかお知り合いらしいじゃないですか。椎名さんも、英も。
それで、僕が送りますよって言うもんだから、ではって事で、お願いしちゃいましたぁ」
…酔ってるな。
冷静になれ、俺。
「それでもう、会場は出たんですか?」
「…」
「もしもーし」
「…ぁあ、なんだか声が遠いなぁ…あ、まだ居るはずですぅ」
あ、もう、遠いのはあんたが酔ってるから、聞き取り辛いんだよ。
「…解りました。
ご連絡有難うごさいました」
当てになるのか?課長の話。
本当に今の話だろうな。
かなり時間経ってからなら、ヤバいじゃないか。
美波の携帯に連絡するが繋がらない。
俺は、仕事の指示をして、直帰すると伝え、会社を出たんだ。