油断は大得?!
最後のスイッチの音が響くと、仄かに暗い中、一之瀬誉の顔が見えた。
さっきまでスイッチをゆっくりと一つ一つ切っていた長い指が、私の左頬をゆっくり撫でた。
掌が頬を包む。
ゾクッとして、不覚にも小さくビクッとなってしまった。
右側につかれていた左手もゆっくりと頬に添えられた。
情熱的なその深い瞳は、私を今だ捕らえて離さなかった。
一之瀬誉の顔。
少しずつ近づいてくる。
元々目の前にあった顔。
もう数センチ程の有余も無くなった。
目線が唇に落ちたと思った刹那…。
「美波ー!…美波ーっ。どこだ?…美波ー…」
直己だ。直己の声がする。
「直…」
直ぐ手で口を塞がれた。
「…シーッ、少し黙ってて。…いい子だから」
一之瀬誉が腕を押し付けてしっかり口を塞いだ。
「貴女の大事な椎名さんが、ここに辿り着くか待って見ましょう。
しばらくして来なければ、俺達はもうホテルを出た後だと思って、また闇雲に街中を探すでしょう。
いいですか、これは賭けですよ」
涙が滲んだ。
……直己、私、ここに居る…。