油断は大得?!
ハァ、美波…ハァ…ハァ…。一体どこに居るんだ。
遅かったのか?……もう出た後なのか…。
俺はまた美波の携帯に連絡をした。
……マナーモードのままなんだな…、どの部屋からも音も聞こえて来やしない。
くそっ。
どこなんだ、一体どこに居る…。
会場の中には居なかった。
あの課長でさえもう居なかった。
本当にもう、どっかに連れて行かれちまったのか…。
当ても無く右往左往した。
…控え室か。
いや、見るからに暗い。
明かりも落ちてるようだ。
誰も居ないのか…。
ん?何だこれ?
白い紙、切れ端みたいなモノ。
絆創膏の剥がした紙か……。
…この柄…。
…美波。
「美波ー!」
俺はうす暗闇に飛び込んだ。
「…残念ですね、見つかってしまいました。
ゲームオーバーです」
すぐ横で声がした。
一之瀬だ。
目が慣れて来た。
「美波…」
一之瀬が塞いでいた手を離す。
「直己ーっ」
叫びながら美波が飛び込んで来た。
「今回は俺の負けだな…」
「大丈夫か、美波。一之瀬さん、何もしてないでしょうね?」
「…残念ながら、まだ何も」
「本当か?美波」
コクンと頷く。
「あぁ…はぁ、…焦った。今年1番慌てた…」