油断は大得?!
「一之瀬さん、貴方には感謝したいくらいですよ。
長くつき合っていると、何もかも当たり前になって来て、気がつかないうちに、大切にしないといけない事が疎かになりそうな時もありました。そうならないつもりでいても、いつしか相手に甘えるんだと思います。
貴方には取られたく無い…、そう思ったら、お蔭様で、新たな情熱も湧いて来たし…。
美波の事、無くせない存在だとよく解かりました。
どこか安泰だと…、油断していた部分があったんだという事も解ったし。
一之瀬さん、貴方のお陰で得たモノが沢山あります。だから、宣戦布告された事に大感謝ですよ」
俺は美波と顔を見合わせた。
「まあ、美波がご覧の通り…、難攻不落どころか、隙だらけなやつなので…。
一生、不安は付き物なんですけどね。ハハハ」
「でしょうね…。でも、椎名さん。結婚するからって、安心しないでください」
「はい?」
なんだと?
「どんな状態でいても、人の気持ちは流動的だという事です。
絶対的な安泰なんて無いですよ?そうですよね?揺らぐことってあるんです。…負け惜しみではない。
俺が…、虎視眈々と狙ってるって事です。…隙はありますから。必ず。
ここまで釘を刺しておけば、貴方は美波さんをずっと大切にして、大事に思ってくれますよね…。椎名さん」
サササッと歩み寄った美波が、チュッと一之瀬の頬に口づけた。
な゙っ!
何をしてる?!どういう感情からそんなことをしてるんだ…?……今のは何だ。
「…美波、…どうした」
まさか、…こいつのこと……。
「ほら、こういうところですよ、美波さんの隙って」
「………だって。こんなのドラマみたいだし、滅多に有る事じゃ無いし。してみたかったの、それだけ。今だけよ?
イケメンだし…つい…ね?」
−完−