油断は大得?!
世間はシルバーウィークに突入していた。
「おはよう、って言ってもお昼前だけど」
「ああ、行くか。途中、ご飯して行こう。
忘れ物無いか?」
「大丈夫」
「しかし…、高々一泊の旅行で…こうも物が要るもんかねー」
私の大きく膨らんだ小さめのボストンバッグを引き取って、後部シートに乗せながら直己が言う。色々、あるんだからと反撃してみせた。
……今日の直己、とても、いい。私はどれだけ直己のことが好きなんだろう。
完全なるオフモード。無造作ヘア。
やや明るめのネイビーのVネックに濃いネイビーのカーディガン。黒のボトム。
顔は今更ですが、俳優の○野○○さんに似ています。…爽やかです。素敵なんです。
…私は極々“普通”ですけど。はい。
「車って事は、まあまあ近場ってことよね?」
「ああ、人気だけど部屋数が少なくて。
最近予約殺到の、まあ、着いてからのお楽しみだ」
車に乗り込みながら、あそこだったりして、なんて、温泉特集の雑誌のページを頭の中で開いていた。
それから私達は海沿いの国道を走り、可愛らしいカフェレストランに立ち寄った。
絶品だと評判のオススメの黒豚トンカツとクリームコロッケのランチセットを堪能した。