油断は大得?!
車の走る先は、当たり前だが景色が段々緑を帯びて来る。
窓を少し開けた。
空気も美味しい気がする。ううん、間違いなく美味しい。深く吸い込んだ。
道は一本道になったが、また、方向的には海沿いに戻ってる。
…あ…ちょっと、雰囲気が秘湯っぽくなって来た気がする。
此処まで来たら、間違いなんてもう無いだろうけど、ナビがもうすぐだと告げていた。
いや、こんなところ、逆に、目的地を変なとこ示したりしなくて凄いよと思った。
少し開けて来たと思ったら、趣のある平屋の建物が見えて来た。
……素敵。落ち着いていて。
昔からあったみたいに景色に溶け込んでいる。
砂利道を玄関までゆっくり乗りつけた。
車から降りて荷物を取り出した。
「椎名様、いらっしゃいませ、お待ちしておりました」
いい声…。ん?…!?
「お世話になります」
その人は直己の持つバッグ二つをスッと引き取って続けた。
「それぞれが独立した離れになっております。
こちらへどうぞ」
斜め前になり案内された。
流れるような所作に呆気に取られ、どうやら私はボーッとしていたようだ。いや違うと思う。
…間違いない。
この人はあの人だ。