油断は大得?!
少しだけ諸事情

離れの部屋に案内された。

「こちらのお部屋は、桔梗、でございます。
お食事はお部屋でとなります。お時間のご指定が無ければ、通常通り19時と言うことになりますが、宜しいでしょうか?」

「はい、大丈夫です。19時でお願いします」

「こちら宿帳でございます。
ご事情は先のご予約のお客様からお伺いしております。椎名様で御記入して頂いて結構です。
お部屋に露天風呂がございますが、別館にも男湯、女湯がそれぞれございます。また違った景色も楽しめる浴場でございます。
こちらはご利用される場合、他の宿泊客の方と会ってしまいますが、差し支え無ければ…、とても眺望が宜しいかと思いますので、お勧めでございます。
では、後ほど仲居がお邪魔いたします。
解らない事がございましたらいつでも御呼び立てください。
失礼致します」

支配人といったところだろうか…。
当たり前なのだが流暢な説明だった。訳ありの宿泊だから、仲居さんではなく、まず先に責任者が?ってことだったのだろうか…。

それから、これも当たり前の事だが、私のような凡人は、アクシデントだったとは言え、やはり記憶に残る事も無かったようだ。何も、特別声はかけられなかったから。


「美波〜、ほら部屋のお風呂も凄くいいよ。
夜、星も綺麗に見えそうだな。今日は天気もいいし」

直己も想像以上だったのかも知れない。

「本当、そうね。…ねえ?此処は何て言う宿?」

離れだからか、何も看板のような物は見えていなかった。

「確か…、一之瀬だったと思う」

「ふぅん、一之瀬か…」

知らなかったな。本当に穴場的な温泉宿なのかも。

「失礼致します。宜しいでしょうか?
お茶のお世話に参りました」
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