嘘に滲む
嘘に滲む
「―宮田夢」

淡々と行われるこの一定作業を終えた麻由は、ただじっと自分の席に座っていた。

今日は高校の卒業式だ。
やっとこの学校と離れられることに歓喜の気持ちを抱きながら、この退屈で、苦痛な行事が早く終わる事を願う。


この三年間、実に色々な事が起こった。いや、色々な嘘をついて来たと言うべきか。

とにかく、卒業と同時に嘘から解放されるのである。
大学に入ったら嘘は止めよう、そう前から決めていた。


いつから嘘をつくようになっていたのかは分からない。
ただ、自然とついた嘘に嘘を重ねて今の自分になったのは確かだ。
止めようと何度も思ったが、前についた嘘を嘘だと言えず、また新しい嘘をつく羽目になった。

この頃からだろう。
嘘をつくのに慣れて、罪悪感などが麻痺していったのは。

慣れとは本当に恐ろしいものだ。止めよう、止めようと思っていたのを、卒業までは仕方ない、と言う気持ちにさせたのだから。
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