心の中を開く鍵
同じことを繰り返すのは、ただのバカのすることだし。

相変わらずなようで実は変わっていて、変わったようで変わらないのなら、本当に結果は見えているし……。

「でも山根さん。一年も経つと人は変わるものよー? 中には数日で変わる人もいるんだし。実際、葛西君の奥さんも、根負けして結婚した実例があるんだから」

唐沢さんに指を差されて、主任が彼女と私を交互に見る。

「僕は別に、妻に嫌われていませんでしたよ?」

「あなたの場合は諦められたんでしょうが! どこの世界に丸め込んで付き合い始める人がいるのよ!」

あなたたちは……仲がイインデスネー。

また喧嘩腰で言い合う二人を眺めながら、呆れて目を細めた。

まぁね。何となく翔梧も先輩という人に色々突っ込み入れられて、何となく反省していたみたいだけど。

だけどねー。だからどうかした状態なワケなんですよねー。

要するに、タイミングが合っていないのよ。

私が翔梧に向き合おうとした時には、翔梧が友達と遊ぶのに明け暮れていて。
今、彼は私に向き合おうとしているのだろうけど、今度は私がどうでもよくなっている。

昔より、無感動な自分がいて、ごめんなさいと言うかさ?

昔よりは確かに、私は話すようにはなったかもしれないけど、だけど昔よりは確実に心は鈍感になっている気がする。

だって、心が動くと言うことは、ある意味で何もかもさらけ出せている時じゃない?

嬉しいもムカつくも、哀しいも楽しいも……全部、心のどこかが揺さぶられて、表面に出てくる感情でしょ?

嬉しいと思うことはたまにだし、ムカッとしても押さえ込む事ができるし、そうしていると哀しいなんて思うことも少なくなって、楽しいと思うとすれば仕事が楽しい。

あれ? やだ、これじゃ翔梧と一緒じゃない。仕事だけ楽しくしてて、気がつけば主任補佐よ。

……情けないのは、私も一緒か。

ふぅーっと大きく息をついて、主任を見上げた。

「私がケリをつけなきゃいけないことですから、誰にも邪魔されたくないです」

「……それは、僕に叔父を押さえ込めと?」

「第三者が入り込むと、ややこしくなるだけですから。とりあえず、仕事しましょう」

よし! と、気合いをいれて指をポキポキ鳴らしたら、主任は引いて、唐沢さんは呆れて呟いた。

「やっぱり雄々しいわねー。山根さん」

……だから、雄々しいはひどいと思います。









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