心の中を開く鍵
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いわゆる有名どころの総合商社である私の会社。
社屋は、超高層ビルでもないけれど、それなりに広さを誇る。

私はそんな商社の秘書課に勤めていた。

それなりに採光に気を使った自社ビル。窓の外の天気は快晴。
天気いいなぁと考えながら、何故か、昔のことをふいに思い出していた。

懐かしい、だけど苦い思い出。

「いいところに山根さん。助けてくださいませー」

聞こえてきた声に振り返り、そこに段ボールを二つ抱えた後輩を見つけてしまって溜め息をついた。

「どうしてそんな無理するの」

「その方が早いかと思ったもので」

「却って効率悪そうだけれど?」

決して軽くはない段ボールを持ち上げて、観月さんを見た。

どこをどう見ても深窓の令嬢にしか見えない、可愛らしい見た目と、ちょっとだけお嬢様口調の観月さん。

可愛らしい外見してるけど、たまに無骨っていうか、ガサツというか、無茶するというか……。

「腰を壊しちゃうよ」

「あ、ありがとうございます。台車を借りれば良かったですね」

ひと息ついた彼女に、思わず苦笑を返してしまった。

「まぁ、私も昔はよくやったけれどね。女の子が無茶しちゃだめよ」

「……でも、皆さん忙しそうですし」

気を使うのは解るけれども。

「健康管理も秘書の務めです」

笑いながら言うと、段ボールを抱えて秘書課のドアの前で立ち止まった。

すでに三年。古株のメンバーになりつつも、仕事はやり甲斐があって楽しい。

普段はお高く止まっている秘書課仲間も、仲間内ではどこか抜けていて可愛いものだ。

段ボールを肩に担ぎ直してドアを開けると、目の前に立っていた男子社員にぎょっとされる。

「山根さん! 何やっているんですか。観月さんも!」

「まぁ。荷物運んだだけよね。ところで観月さん。これなぁに?」

「総会のパンフです」

それはそれは、重いはずだよね。

「僕が持ちます」

テキパキと段ボールを引き取ってくれた彼にお礼を言っていると、また後ろからドアが開いて今度は葛西主任が顔を出す。
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