心の中を開く鍵
5
*****
「それで、どうなったの? どうなったの?」
昨日はケリをつけに行くと宣言をして帰ったから、進展が気になるらしい。
朝っぱらから、うきうきワクワクして目を輝かせている唐沢さん。
無表情に彼女を振り返り、それから気を取り直してファイルに視線を落とす。
「どうにもなりませんでした」
「えー。残念。肉食君も度胸ないな」
唐沢さんも、間違いなく顧問寄りの人だよねー。
半笑いしながら資料整理を始めた。
私としては、翔梧に度胸がないとは思えないな。
だいたい、明らかに気のない当人を目を前にして『口説くから』とか、『六年前から決めていた』とか、宣言するような男に度胸がなかったら、世の中の男のほとんどが“度胸のない人”になってしまう。
でも、そんな男相手と、どうにかなったりしないって。
……まぁ、“つきまとわないで欲しい”と言う、私のお願いもどうにもならなかったわけだけど。
結果“どうにかしなくては”ならなくなった気がしないでもない。
考えながらつくづく思うことは……。
「日本語って便利だな」
「え? どうかした山根さん」
びっくりした唐沢さんと目が合って、曖昧に微笑む。
「いえ。何でもないです」
ひとり言を呟いちゃっただけでーす。
独り暮らしをしていると、ついつい増えちゃうのよ。テレビに突っ込んだり、読んでいた雑誌や小説に突っ込んだり。
……なんだろ。私は寂しいのかな。
でも、まぁ、本当に日本語って便利過ぎてめまいがしそうかも。
『AはA』、『BはB』の英語とは違って、ちょっとしたニュアンスで何でも曖昧にできる。
尻上がりの『あぁ』は納得だけど、尻下がりの『あぁ』は諦めた感じになるし。
○○な感じも、これまた便利。
……そして、昨日の会話はふたりとも“困る”としか、言っていないんだよねー。
困るからどうすれって言うんだ、私!
「それで、どうなったの? どうなったの?」
昨日はケリをつけに行くと宣言をして帰ったから、進展が気になるらしい。
朝っぱらから、うきうきワクワクして目を輝かせている唐沢さん。
無表情に彼女を振り返り、それから気を取り直してファイルに視線を落とす。
「どうにもなりませんでした」
「えー。残念。肉食君も度胸ないな」
唐沢さんも、間違いなく顧問寄りの人だよねー。
半笑いしながら資料整理を始めた。
私としては、翔梧に度胸がないとは思えないな。
だいたい、明らかに気のない当人を目を前にして『口説くから』とか、『六年前から決めていた』とか、宣言するような男に度胸がなかったら、世の中の男のほとんどが“度胸のない人”になってしまう。
でも、そんな男相手と、どうにかなったりしないって。
……まぁ、“つきまとわないで欲しい”と言う、私のお願いもどうにもならなかったわけだけど。
結果“どうにかしなくては”ならなくなった気がしないでもない。
考えながらつくづく思うことは……。
「日本語って便利だな」
「え? どうかした山根さん」
びっくりした唐沢さんと目が合って、曖昧に微笑む。
「いえ。何でもないです」
ひとり言を呟いちゃっただけでーす。
独り暮らしをしていると、ついつい増えちゃうのよ。テレビに突っ込んだり、読んでいた雑誌や小説に突っ込んだり。
……なんだろ。私は寂しいのかな。
でも、まぁ、本当に日本語って便利過ぎてめまいがしそうかも。
『AはA』、『BはB』の英語とは違って、ちょっとしたニュアンスで何でも曖昧にできる。
尻上がりの『あぁ』は納得だけど、尻下がりの『あぁ』は諦めた感じになるし。
○○な感じも、これまた便利。
……そして、昨日の会話はふたりとも“困る”としか、言っていないんだよねー。
困るからどうすれって言うんだ、私!