心の中を開く鍵
「一回、女子社員に人気の洋菓子屋で買ったプリンにしたら、さすがにどこのかわからなかったのか、でっかいプリンに化けてたよな?」
ケラケラ笑う翔梧を眺めて、恥ずかしさ半分、怒り半分で顔を赤らめる。
き、気づいていて、何も言わなかったの?
「……わ、笑わなくてもいいじゃない」
「いや。笑うだろー。お前は澄ました顔してるし……だいたい、俺は甘党じゃないのにプリン常備してるとか、変に思わなかったのかよ」
ちらっと目が合って、視線を空に向けた。
あまり、思わなかったかな。
思わなかった……と言うかさ。
「私の為……だった?」
「まぁな。俺は紅茶は飲まねえし、砂糖も使わない。当たり前に甘いプリンも、クッキーも食わねえよ」
「……そう」
ポツリと呟いて前を向くと、その顔を翔梧が笑って覗きこむ。
「お互いに、言わないことが多すぎたな?」
「……そう、だね」
「困った顔してんなー?」
そりゃそうでしょ。
冷蔵庫のプリンも、紅茶のティーバッグも、シュガーポットに毎回満杯のお砂糖も、翔梧も使うものだと思っていたもん。
ちょっとだけ拝借してるつもりで、たまに補充していたけど、あまりなくならないから……少しだけ不思議ではあったけどさ。
「言ってくれれば、良かったのに」
「あのな? よーく考えてみろ」
学校の先生みたいに真面目な顔をして、翔梧は人差し指を立てる。
「プリン買っておいたから食えだとか、紅茶と砂糖補充しておいただとか、バイトもしてない大学生の彼女に社会人してる男が言うのか?」
……えーと。それは普通に軽く会話にならない?
「そんなもん、いちいち言ってたら、ただのケチな男だろ?」
「……それは、間違いないよね」
ふて腐れたような翔梧を見上げた。
……そうだね。
翔梧はあまり言葉にはしなかったかも知れないけど、そんな優しさがあったと思う。
小さく笑うと、諦めたよう苦笑が見えた。
……そう。私はそんな翔梧が大好きだった。
それを、今さら思い出した。
ケラケラ笑う翔梧を眺めて、恥ずかしさ半分、怒り半分で顔を赤らめる。
き、気づいていて、何も言わなかったの?
「……わ、笑わなくてもいいじゃない」
「いや。笑うだろー。お前は澄ました顔してるし……だいたい、俺は甘党じゃないのにプリン常備してるとか、変に思わなかったのかよ」
ちらっと目が合って、視線を空に向けた。
あまり、思わなかったかな。
思わなかった……と言うかさ。
「私の為……だった?」
「まぁな。俺は紅茶は飲まねえし、砂糖も使わない。当たり前に甘いプリンも、クッキーも食わねえよ」
「……そう」
ポツリと呟いて前を向くと、その顔を翔梧が笑って覗きこむ。
「お互いに、言わないことが多すぎたな?」
「……そう、だね」
「困った顔してんなー?」
そりゃそうでしょ。
冷蔵庫のプリンも、紅茶のティーバッグも、シュガーポットに毎回満杯のお砂糖も、翔梧も使うものだと思っていたもん。
ちょっとだけ拝借してるつもりで、たまに補充していたけど、あまりなくならないから……少しだけ不思議ではあったけどさ。
「言ってくれれば、良かったのに」
「あのな? よーく考えてみろ」
学校の先生みたいに真面目な顔をして、翔梧は人差し指を立てる。
「プリン買っておいたから食えだとか、紅茶と砂糖補充しておいただとか、バイトもしてない大学生の彼女に社会人してる男が言うのか?」
……えーと。それは普通に軽く会話にならない?
「そんなもん、いちいち言ってたら、ただのケチな男だろ?」
「……それは、間違いないよね」
ふて腐れたような翔梧を見上げた。
……そうだね。
翔梧はあまり言葉にはしなかったかも知れないけど、そんな優しさがあったと思う。
小さく笑うと、諦めたよう苦笑が見えた。
……そう。私はそんな翔梧が大好きだった。
それを、今さら思い出した。