心の中を開く鍵
*****



それからの私たちは、軽く喧嘩はあるものの、予定が合えば休みの日に会うようになっていた。

食事に行ったり、普通の映画に行ったり、何故か遊園地に行ったり。

誘われてしまう私は、ダメな女なんだろうか?

でも、昔みたいにドタキャンされる事もないし、もし遅れそうな時には連絡をくれるようになっているし。

……それは、当たり前と言えば当たり前の事なんだろうけど。

何だか今までにはなかった事で、新鮮な気もする。

そして、なんの予定もない土曜日。

テレビの音を聞きながしながら、乾燥機から洗濯物を取り出して畳む。
ニュースでは、のどかに紅葉の様子が流れるような季節らしい。
確かに、最近は少し肌寒いよね。

考えていたら、軽快にスマホの着メロが鳴った。

見てみると翔梧からの着信で、今日は何も約束していなかったのに……眉を上げながら画面をタップする。

「もしもし?」

『ああ。起きてたか?』

なんて事もない普通の声音に眉をしかめる。

「起きてるでしょ。もうお昼のバラエティー番組の時間だよ?」

スマホを持ち替えて、畳み終わった洗濯物を持って寝室に向かった。

『何してた?』

「一週間分の洗濯と掃除~」

ベッドに洗濯物を置くと、タンスの引き出しを開けてしまい始める。

『下着もかぁ?』

「どこの変態オヤジですかー?」

クスクス笑いながら、洗濯物をしまい終えて引き出しに手をかける。

『洗濯は終わったか?』

「うん? 終わった……けど?」

『昼飯は?』

まだ……だけど?

「なになに? なんの予定確認?」

『これから……出掛けないか?』

は……? 今から?

「ど、どこに?」

引き出しを閉めて、髪をかき上げると瞬きをする。

『えーと……キャンプ場?』

「今から!? どうしていきなり」

『いやぁ……俺もいきなり言われて、砂川さんに子守頼まれた。だから、ちょっとヘルプしてくんない?』

……キャンプ場に、子守のヘルプですか?
< 65 / 87 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop