心の中を開く鍵
「すっげーくつろいだ格好だな」

翔梧に言われて、彼と部長さんを交互に見た。

そんなに変かな?

「キャンプ場で、小さな子と遊んで泊まるなら、妥当な格好かと思って」

「真由は本気で遊ぶモードだったんだ?」

「翔梧が遊び相手って言ったんじゃない」

部長さんが眉を上げ、翔梧を呆れたように見る。

「お前。うちのチビたちをダシにしたのか?」

ダシ……? じろりと私も翔梧を見ると、さすがに顔を赤くして、慌てて両手を振った。

「え。いや、でも……誘われたら、俺はいつもその役割だし、普通に誘って、それが泊まりなら、お前は絶対に来ないだろ!」

最後は開き直って怒鳴られる。

「当たり前じゃない」

睨み合う私たちに、それぞれ飛び出してきた双子ちゃんたちがお皿とお箸を差し出してきた。

「あのねー。お腹がすいたら、怒るんだって」

「ママがねー、いつもパパにもそう言ってるの」

可愛らしくニッコリと微笑んでいる双子ちゃんたちを眺め、それから翔梧とぼんやりお互いに顔を見合わせ、それから同時に部長さん夫婦を振り向いた。

「い、いつも喧嘩してるわけじゃないからな!」

今度は部長さんが顔を赤くして、細かく首を振る。

……部長さんが墓穴を掘ってます。

「じゃ、喧嘩しないように、お腹いっぱい食べてちょうだいね」

気にした様子もなく、トングをカチャカチャさせながら奥さんが微笑んだ。

母は強い……のかな?

思わずクスクス笑って、由紀ちゃんからお皿とお箸を受け取った。

「ありがとう」

「ううん。喧嘩はよくないって、ばあちゃんも言ってた」

「そうかー。そうだよねー?」

「いいからおとなしく食ってろチビども!」

部長さんが笑いながら大声で叫んで、食事になった。
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