心の中を開く鍵
「なんなんだ、あのおっさん」
いきなりぼやかれても困る。
「翔梧、帰ろう。こんなところで暴言吐かれても、私が困るし」
ジャケットを引っ張って、駅に向かうと、翔梧の不機嫌は次第に落ち着いてきたらしい。
「案外、大丈夫そうだな。お前」
「そうだね。案外平気。聞き流せばいっかと思って」
翔梧はぱちくりと瞬きして、それからまじまじと私を眺めた。
「真由の方が怒ってると思ってた」
「そうでもない……って、私が怒ってると思ってた?」
「ちょっと思ってた」
翔梧は溜め息をつき、それからジャケットを掴んでいた私の手を取り上げると、手を繋ぎ直す。
それを見ながら小さく笑った。
「だって、翔梧がそんなに怒っていたら、私は冷静にならなきゃって思うじゃない?」
「そういうもんか?」
「秘書だもん。誰かがヒートアップしていたら、こっちは冷静に状況判断しなきゃ勤まらないよ」
納得したような、納得しないような顔を見て、小さく首を振った。
「私って、翔梧に愛されちゃってんのね」
冗談で、からかうつもりで呟いたら、
「当たり前だ。それは自信もて」
かなり真面目に返されて足を止めた。
あ……愛されちゃっているらしい。
でも、ちょって待って。
翔梧の照れる基準ってどこなわけ?
好きだとかは真面目に言ってくれるけど、プロポーズは照れるんでしょ?
でも“愛してる”は照れないわけ?
立ち止まった私を見下ろして、翔梧は眼鏡を外すとそれをジャケットのポケットにしまい、繋いでいない手でそっと私の頬に触れた。
「真由……」
「は、はい?」
「俺は、お前を愛してるぞ」
どーしてそんな台詞だけは真面目に言うんだ!
いきなりぼやかれても困る。
「翔梧、帰ろう。こんなところで暴言吐かれても、私が困るし」
ジャケットを引っ張って、駅に向かうと、翔梧の不機嫌は次第に落ち着いてきたらしい。
「案外、大丈夫そうだな。お前」
「そうだね。案外平気。聞き流せばいっかと思って」
翔梧はぱちくりと瞬きして、それからまじまじと私を眺めた。
「真由の方が怒ってると思ってた」
「そうでもない……って、私が怒ってると思ってた?」
「ちょっと思ってた」
翔梧は溜め息をつき、それからジャケットを掴んでいた私の手を取り上げると、手を繋ぎ直す。
それを見ながら小さく笑った。
「だって、翔梧がそんなに怒っていたら、私は冷静にならなきゃって思うじゃない?」
「そういうもんか?」
「秘書だもん。誰かがヒートアップしていたら、こっちは冷静に状況判断しなきゃ勤まらないよ」
納得したような、納得しないような顔を見て、小さく首を振った。
「私って、翔梧に愛されちゃってんのね」
冗談で、からかうつもりで呟いたら、
「当たり前だ。それは自信もて」
かなり真面目に返されて足を止めた。
あ……愛されちゃっているらしい。
でも、ちょって待って。
翔梧の照れる基準ってどこなわけ?
好きだとかは真面目に言ってくれるけど、プロポーズは照れるんでしょ?
でも“愛してる”は照れないわけ?
立ち止まった私を見下ろして、翔梧は眼鏡を外すとそれをジャケットのポケットにしまい、繋いでいない手でそっと私の頬に触れた。
「真由……」
「は、はい?」
「俺は、お前を愛してるぞ」
どーしてそんな台詞だけは真面目に言うんだ!