その手が暖かくて、優しくて
一方、綾小路華麻呂は私設軍隊のなかの不良10人ほどを生徒会長室に呼び出して、またも悪巧みを行っていた。
「いいか、葉山亜里沙を拉致って全校演説会が終わるまで外にだすな!演説会に出なければ、やつは棄権したことになる。それで、全てうまくいく。」
「わかりました。」
「それと、計画を実行に移す際には、決して誰にも見られないよう、そしてバレないようにやれ。特に僕とはなんの関係もないようにしろ!それを絶対に忘れるな!」
「はい」
これまた、コテコテな悪人がやりそうな典型をやろうとしていたのだ。
そこへ
「綾小路会長、吹奏楽部部長が来てます。」
部屋のすぐ外から、ドア越しに会計委員長の金田金好が室内の華麻呂に向かって報告する声がした。
華麻呂は、その10人の不良たちに
「じゃ、頼むぞ!行け!状況は逐一、僕に報告しろ!」
彼は不良たちを部屋から出て行かせてから、吹奏楽部の部長を部屋に招き入れた。
吹奏楽部の部長は部屋に入り、
「綾小路君、実はとても困ったことが起きているんだ。」
そう、話を切り出した。
「え!いったい何が起きてるんです?」
少し驚いた顔で華麻呂が吹奏楽部長に尋ねると、
「部員のほとんどが今回の選挙での票入れ協力に対して拒否してるんです。」
「なんだって!」
「うちの部と兼任が多いブラスバンド部からは『今回の選挙では、葉山亜里沙を応援する。』との通告もありました。いったい、どうなっているのか…僕には、さっぱり…」
「ふざけんな!それを抑えるのがあんただろ!」
思わず怒鳴ってしまった華麻呂の声に、室内は緊張による無言に包まれた。
「し…しかし…」
そこまで言って言葉に詰まる吹奏楽部の部長に背中を向けて、華麻呂は最近の「異変」について考えていた。
昨日、正門で演説しているとき、サッカー部の連中の態度が妙によそよそしかった。
また、Aクラスのなかにも、彼の演説に対して背を向けるものが何人かいた。
いずれも、これまではなかった現象だ。
「どうしたっていうんだ…?急に…何かが起こっている…」
華麻呂は今しがた不良たちに指示した「亜里沙拉致」について、やはり手を打っておいてよかったと考えていたが、この不気味な「異変」について、何か得体の知れないものが裏で動いているような、そして、それがあきらかに亜里沙の味方をしている。
そんな目に見えない敵の存在に恐ろしさを感じていた。
「いいか、葉山亜里沙を拉致って全校演説会が終わるまで外にだすな!演説会に出なければ、やつは棄権したことになる。それで、全てうまくいく。」
「わかりました。」
「それと、計画を実行に移す際には、決して誰にも見られないよう、そしてバレないようにやれ。特に僕とはなんの関係もないようにしろ!それを絶対に忘れるな!」
「はい」
これまた、コテコテな悪人がやりそうな典型をやろうとしていたのだ。
そこへ
「綾小路会長、吹奏楽部部長が来てます。」
部屋のすぐ外から、ドア越しに会計委員長の金田金好が室内の華麻呂に向かって報告する声がした。
華麻呂は、その10人の不良たちに
「じゃ、頼むぞ!行け!状況は逐一、僕に報告しろ!」
彼は不良たちを部屋から出て行かせてから、吹奏楽部の部長を部屋に招き入れた。
吹奏楽部の部長は部屋に入り、
「綾小路君、実はとても困ったことが起きているんだ。」
そう、話を切り出した。
「え!いったい何が起きてるんです?」
少し驚いた顔で華麻呂が吹奏楽部長に尋ねると、
「部員のほとんどが今回の選挙での票入れ協力に対して拒否してるんです。」
「なんだって!」
「うちの部と兼任が多いブラスバンド部からは『今回の選挙では、葉山亜里沙を応援する。』との通告もありました。いったい、どうなっているのか…僕には、さっぱり…」
「ふざけんな!それを抑えるのがあんただろ!」
思わず怒鳴ってしまった華麻呂の声に、室内は緊張による無言に包まれた。
「し…しかし…」
そこまで言って言葉に詰まる吹奏楽部の部長に背中を向けて、華麻呂は最近の「異変」について考えていた。
昨日、正門で演説しているとき、サッカー部の連中の態度が妙によそよそしかった。
また、Aクラスのなかにも、彼の演説に対して背を向けるものが何人かいた。
いずれも、これまではなかった現象だ。
「どうしたっていうんだ…?急に…何かが起こっている…」
華麻呂は今しがた不良たちに指示した「亜里沙拉致」について、やはり手を打っておいてよかったと考えていたが、この不気味な「異変」について、何か得体の知れないものが裏で動いているような、そして、それがあきらかに亜里沙の味方をしている。
そんな目に見えない敵の存在に恐ろしさを感じていた。