その手が暖かくて、優しくて
亜里沙、拉致られる
茜色の空が、やがて紫色に変わろうとしている頃
亜里沙は自宅の最寄駅改札を抜け、駅から続く商店街を歩いていた。
辺りは亜里沙と同じく学校帰りの学生や、仕事終わりの会社員などが大勢行きかっており、商店からの声も賑やかに響き渡っていた。
(今日はちょっと張り切りすぎちゃったな…大声出しすぎて少し喉が痛いや…)
そんなことを考え、肝心な演説会のときにガラガラの声になっていたり、ましてや声が出ないなんてことになったら大変だ。
(明日はもう少し抑えよう)
そんなことを考えながら歩いているうちに、彼女は駅前商店街から離れ、辺りは閑静な住宅街となっていた。
さっきまで赤く染まっていた空も、紫がかった雲の陰から星も見え始めて、亜里沙の歩いている道も薄暗くなってきた。
とはいえ、彼女にとっては慣れ親しんだ街並み。この先にある次の角を曲がって、あと10分くらい歩けば家に着く。
(家に帰ったら、とりあえずお風呂に入って、それからご飯食べて…夜には演説会のスピーチ原稿をもう一回読み返しておこう。)
そんな亜里沙が道を左に曲がった時である。
「…………!!」
そこに待ち伏せていた数人の男たちによって、亜里沙はそこから連れ去られてしまった。
「やだ!助け…」彼女の口はふさがれ、悲鳴をあげることも、助けを呼ぶこともできないままだった。
亜里沙が何者かによって拉致されたらしいといった情報を一番早く聞いたのは柏木祐希だった。
亜里沙の身辺を警戒するよう後輩たちに指示していたのに、その後輩の目の前で一瞬にして彼女は捕まり、連れ去られてしまったのだ。
「すいません。柏木さん」報告後、祐希に頭を下げる後輩に、
「どこに連れて行かれたか、わからないのか?」
「はい、むこうは車があって、追いかけられませんでした。」
「とにかく探せ!集められるだけ人員を集めろ!」
「はい!」
祐希は尊敬している勝弥の期待に応えたかった。それ以上にそんな勝弥が大切に思っている亜里沙のことを、本気で守りたいと考えていたのに…
祐希たちが亜里沙捜索を始めたころ、瑞希も金森から拉致のことを聞いた。
「何だって!」
「すいません。綾小路が他の幹部にも極秘にしたまま、やったことのようで、事前に情報を掴むことができませんでした。」
「とにかく、メンバーかき集めて亜里沙を探して!」
「はい!」
「亜里沙…どうしよ…無事でいてね…」瑞希は祈った。
亜里沙は自宅の最寄駅改札を抜け、駅から続く商店街を歩いていた。
辺りは亜里沙と同じく学校帰りの学生や、仕事終わりの会社員などが大勢行きかっており、商店からの声も賑やかに響き渡っていた。
(今日はちょっと張り切りすぎちゃったな…大声出しすぎて少し喉が痛いや…)
そんなことを考え、肝心な演説会のときにガラガラの声になっていたり、ましてや声が出ないなんてことになったら大変だ。
(明日はもう少し抑えよう)
そんなことを考えながら歩いているうちに、彼女は駅前商店街から離れ、辺りは閑静な住宅街となっていた。
さっきまで赤く染まっていた空も、紫がかった雲の陰から星も見え始めて、亜里沙の歩いている道も薄暗くなってきた。
とはいえ、彼女にとっては慣れ親しんだ街並み。この先にある次の角を曲がって、あと10分くらい歩けば家に着く。
(家に帰ったら、とりあえずお風呂に入って、それからご飯食べて…夜には演説会のスピーチ原稿をもう一回読み返しておこう。)
そんな亜里沙が道を左に曲がった時である。
「…………!!」
そこに待ち伏せていた数人の男たちによって、亜里沙はそこから連れ去られてしまった。
「やだ!助け…」彼女の口はふさがれ、悲鳴をあげることも、助けを呼ぶこともできないままだった。
亜里沙が何者かによって拉致されたらしいといった情報を一番早く聞いたのは柏木祐希だった。
亜里沙の身辺を警戒するよう後輩たちに指示していたのに、その後輩の目の前で一瞬にして彼女は捕まり、連れ去られてしまったのだ。
「すいません。柏木さん」報告後、祐希に頭を下げる後輩に、
「どこに連れて行かれたか、わからないのか?」
「はい、むこうは車があって、追いかけられませんでした。」
「とにかく探せ!集められるだけ人員を集めろ!」
「はい!」
祐希は尊敬している勝弥の期待に応えたかった。それ以上にそんな勝弥が大切に思っている亜里沙のことを、本気で守りたいと考えていたのに…
祐希たちが亜里沙捜索を始めたころ、瑞希も金森から拉致のことを聞いた。
「何だって!」
「すいません。綾小路が他の幹部にも極秘にしたまま、やったことのようで、事前に情報を掴むことができませんでした。」
「とにかく、メンバーかき集めて亜里沙を探して!」
「はい!」
「亜里沙…どうしよ…無事でいてね…」瑞希は祈った。