その手が暖かくて、優しくて
「ちきしょー!Aクラスのやつら、むかつくなぁ…」
学校帰りに近くの商店街を並んで歩きながら、健介は亜里沙に呟いた。

夕方の商店街は私鉄の駅へ向かうものや、逆に駅から出て買い物をするものたちで混雑していた。
「健介!声が大きいよ!誰かに聞かれて、生徒会にチクられたらやばいよ。」

そんな亜里沙に
「お前は平気なんか?こんな不平等。」

「じゃあ、つぎのテストで頑張って勉強してAクラスに行けばいいじゃん。」

「それができねぇからEクラスなんだよ!」

健介は吐き捨てるようにそう言うと、
「なぁ、亜里沙。俺たちにも何か対抗手段があるんじゃないかって思うんだ。D、Eクラスの人数はA、B、Cクラスのやつらと、ほぼ同じだし、Cクラスのやつらだって、ほとんどはA、Bクラスに対して面白くないって思ってるはずだ。」

「それは…そうだけど…」亜里沙はそう言いながらも

「でも、やっぱり無理だよ。生徒会を敵に回して退学にでもなるようなこと嫌だもん。」

半ば諦め顔で、俯きながら、そう言う亜里沙の言葉を健介は複雑な気持ちで聞いていた。
健介にとって、亜里沙は幼なじみ。中学を卒業するまでは学校生活は楽しかった。
高校に進学してからも、「生徒会による自治が認められているから、生徒が生徒のために生徒による学校運営がある」と聞いたときは、これからの高校生活に夢と希望を感じた。

しかし、
現実は、そんな彼の夢も希望も無残に打ち砕き、3年生となってしまった今では、このまま卒業することに対して「しょうがない」と思い始めている自分に健介は苛立っていた。だから幼なじみの亜里沙の口から「しょうがないよ」なんて言葉が出てくることに対して、もどかしさと悔しさを感じていた。

(俺に少しの勇気があれば、何かできるはずだ。)

亜里沙には強い自分を見せたい。それが無理でも臆病に逃げてしまう自分を見せたくない。
健介は亜里沙に恋をしていた。一方、亜里沙には全く、そういった感じは見られない。
彼女にとって健介は「ただの幼なじみ」なんだろなと健介は思い、それを歯がゆく思っていた。

男として今、立ち上がらなければ後悔する

そのとき、健介はあることを決意していた。

2人が商店街のはずれにさしかかったときである。

「おい、お前ら旭が丘だよな」

見るからにヤバそうな5人が二人の行く手を遮った。
旭が丘高校に近く、対立している芝久代(しばくよ)学園の連中だ。


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