その手が暖かくて、優しくて
亜里沙、演説する
その日の朝、華麻呂は正門で亜里沙を見かけて驚いた。
「どうなってんだ?これは、いったい…」
日下に電話してみたが、繋がらない。
「なんなんだ!こいつ!ふざけんな!こっちは金払ったのに!」
昨日も、かなりの数が亜里沙支援に回ったという情報が華麻呂の耳に入っていた。
このままではヤバい。彼は焦っていた。まさかこんなことになるとは数日前までは想像すらしていなかった。
午後には全校演説会がある。なんとかそこで盛り返しをはかりたいと考えていた。
「おはよう亜里沙。足どうしたの?」
瑞希が亜里沙に声をかけてきた。亜里沙が少し足を引きずっているように見えたからだが、瑞希はその事情を知っていた。
昨夜深夜になって金森から亜里沙が真鍋勝弥によって救出されたという連絡があった。また、亜里沙の救出のために暴走族100人以上が動いていたことも、そのとき知った。
やはり、亜里沙は綾小路に戦いを挑むため、我々の「旗」になれる。
そう確信した。
「うん。ちょっとひねっちゃっただけだから大丈夫だよ」
亜里沙は笑顔でそう答えた。
「いよいよ今日だね。演説会」
「うん。なんか緊張するなぁ」
「がんばってね!ちゃんとスピーチ原稿読んできた?」
「うん!ばっちり!」
朝は晴れていたのに、午前中に少し雲が出てきたと思ったら、午後になって雨が降ってきた。
そんななか旭が丘高校の全校生徒は体育館に移動していた。
檀上の脇で、集まってくる生徒たちの様子を見ていた亜里沙は
(うわ!いっぱい…こんなとこで演説するんだ…アタシ…)
湧き上がってくる緊張に、亜里沙は手に持っていたスピーチ原稿をぎゅっと握った。
やがて、全ての生徒が集合し、壇上には綾小路と亜里沙が用意された椅子に座った。
最初に綾小路が立ち上がりスピーチ台の前に立った。
「全校生徒の諸君。現生徒会長の綾小路華麻呂です。当校は創立以来、クラス分けによる徹底した個別指導によって、学問、スポーツ、文化活動において優秀な卒業生を多く輩出してきました。僕はこの伝統を守り、そして、より良い学校を構築すべく昨年の当選からも生徒会長の職務遂行に尽くしてまいりました。」
それから10分にわたって熱く演説する華麻呂の後ろで亜里沙は高まる緊張と戦っていた。
(やばい…どーしよー。足が震えてきた。)そう考えている亜里沙の目に檀上脇にいる勝弥の姿が映った。
(あ!真鍋君)
会場警備のために勝弥はそこにいた。だから彼の姿を見つけた亜里沙には目を向けることもなく、ひたすら檀上脇から会場を見ていたが、
勝弥を見たとき、不思議と亜里沙は気持ちが落ち着いていくのを感じた。
「どうなってんだ?これは、いったい…」
日下に電話してみたが、繋がらない。
「なんなんだ!こいつ!ふざけんな!こっちは金払ったのに!」
昨日も、かなりの数が亜里沙支援に回ったという情報が華麻呂の耳に入っていた。
このままではヤバい。彼は焦っていた。まさかこんなことになるとは数日前までは想像すらしていなかった。
午後には全校演説会がある。なんとかそこで盛り返しをはかりたいと考えていた。
「おはよう亜里沙。足どうしたの?」
瑞希が亜里沙に声をかけてきた。亜里沙が少し足を引きずっているように見えたからだが、瑞希はその事情を知っていた。
昨夜深夜になって金森から亜里沙が真鍋勝弥によって救出されたという連絡があった。また、亜里沙の救出のために暴走族100人以上が動いていたことも、そのとき知った。
やはり、亜里沙は綾小路に戦いを挑むため、我々の「旗」になれる。
そう確信した。
「うん。ちょっとひねっちゃっただけだから大丈夫だよ」
亜里沙は笑顔でそう答えた。
「いよいよ今日だね。演説会」
「うん。なんか緊張するなぁ」
「がんばってね!ちゃんとスピーチ原稿読んできた?」
「うん!ばっちり!」
朝は晴れていたのに、午前中に少し雲が出てきたと思ったら、午後になって雨が降ってきた。
そんななか旭が丘高校の全校生徒は体育館に移動していた。
檀上の脇で、集まってくる生徒たちの様子を見ていた亜里沙は
(うわ!いっぱい…こんなとこで演説するんだ…アタシ…)
湧き上がってくる緊張に、亜里沙は手に持っていたスピーチ原稿をぎゅっと握った。
やがて、全ての生徒が集合し、壇上には綾小路と亜里沙が用意された椅子に座った。
最初に綾小路が立ち上がりスピーチ台の前に立った。
「全校生徒の諸君。現生徒会長の綾小路華麻呂です。当校は創立以来、クラス分けによる徹底した個別指導によって、学問、スポーツ、文化活動において優秀な卒業生を多く輩出してきました。僕はこの伝統を守り、そして、より良い学校を構築すべく昨年の当選からも生徒会長の職務遂行に尽くしてまいりました。」
それから10分にわたって熱く演説する華麻呂の後ろで亜里沙は高まる緊張と戦っていた。
(やばい…どーしよー。足が震えてきた。)そう考えている亜里沙の目に檀上脇にいる勝弥の姿が映った。
(あ!真鍋君)
会場警備のために勝弥はそこにいた。だから彼の姿を見つけた亜里沙には目を向けることもなく、ひたすら檀上脇から会場を見ていたが、
勝弥を見たとき、不思議と亜里沙は気持ちが落ち着いていくのを感じた。