その手が暖かくて、優しくて
あくる日の生徒会室では
「現在612名の生徒のうち400票前後が葉山亜里沙に入るという予想結果になっています。」
不安そうな金田からの報告を受け、華麻呂は

「そうか、150~200票くらいを取り返す必要があるな」

「そうです。」

「まとまった組織票のあるグループをまとめておけ、数持ってるとこから順番に取り崩し作戦を決行するぞ。あと1週間しかないんだ。急げ!」

「わかりました。」
金田が綾小路の選挙協力スタッフに調査と、その結果のリストアップを指示し、自らもパソコンに向かって、作業を開始した。

続けて、華麻呂は風紀委員の清宮に

「至急、風紀委員のメンバーを集めておいてくれ」
と指示した。


15分ほどで25人の風紀委員が集まった。もちろんそのなかには瑞希が送り込んだ龍神会のスパイ、金森もいた。

金森は部屋に入るなり、金田の指示で忙しく資料を作っているスタッフを見た。

(いったい…何を始めたんだ?)

その部屋を抜けて隣にある会議室に風紀委員全員が揃った。

そこへ華麻呂が風紀委員たちに話し始めた。
「今回の選挙戦に『龍神会』が葉山亜里沙側に付き、票集めに動いていたことは明白だ。やつらの動きを封じるために、君たちには「疑わしい」だけの者も含めて、徹底検挙をやってもらいたい。奴らを拘束、監視することで『龍神会』を動けなくしてもらいたい。」

「しかし、それをやってしまうと組織壊滅のため、全容解明を目指してきた今までの努力が…」
清宮が、そんな意見をはさもうとすると…

「事態は緊急なんだ!仮にそうやって、やつらのトップの正体が分からなくても組織自体を弱体化できれば、いいだろ!」

「しかし…」

「俺に逆らうな!言われたとおりにやれ!いいな!」

「わかりました。」
しかし、そう答える清宮の表情は険しかった。



その日の午後から、「龍神会」メンバーが次々と風紀委員によって、逮捕されていき、
佐藤も同様に身柄を拘束されてしまった。


「やはり、反撃に転じてきたか…」瑞希がそう考えるなか、華麻呂の次の手が、亜里沙陣営にさらなる攻撃をしかけてきたのだ。




その夜の綾小路家では、
広いリビングにおかれた大きなソファに座る父親の前に華麻呂は座っていた。
そこでの華麻呂の話に、彼の父親は
「うむ…しょうがないな…わかった。お前が、わしに頼みごとをしてくるのも久しぶりだ。聞いてやろう。明日にでも早速、手配しよう。このリストに書かれてある者に言えばいいんだな。」

「はい。」

それは、あのとき華麻呂の指示で金田たちが作成したリストだった。



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