その手が暖かくて、優しくて
彼らは旭が丘に対して威嚇行動を繰り返していたために、旭が丘生徒会は防衛担当や綾小路の私設軍隊に命じて、パトロール強化を実施した。
それによって、商店街を含めた旭が丘高校周辺から彼らは完全に排除されてしまった時期があった。
そんなパトロール強化が緩和される先月まで彼らは、ここ商店街を通ることもできず、旭が丘を快く思っていなかった。
当時、旭が丘生徒会内でも、この武力行使について賛否分かれたが、綾小路の「適正な自衛権の行使であり、自校の生徒の安全を守ることは生徒会の義務だ」とする意見に最終的には生徒会議会での強行採決が行われ、防衛部隊によって芝久代学園の生徒は、ここ商店街においても行動を制限せざるをえない状況に追い込まれていた。
それを不満としている者は芝久代学園には多数いた。
「お前らが仲良くイチャついてんの見てたら、腹立ってきてな。」
そんな芝久代学園の連中から、健介はかろうじて亜里沙を庇い、男たちと亜里沙を遮るように間に立った。
しかし、5対1。特別ケンカが強いわけでもない健介にとって絶対絶命のピンチだった。
そんな健介と亜里沙を旭が丘高校防衛担当の真鍋勝弥は少し離れた歩道橋の上から見ていた。
勝弥も亜里沙たちとは小学校の頃からの同級生だった。
放課後、いっしょに遊んだりしたことはなかったが、勝弥には忘れられない亜里沙との思い出があった。
彼は小学3年生のときに両親を突然の事故で亡くし、その後、親戚の家に引き取られた。
彼の両親の葬儀では当時のクラスメイトも参列し、亜里沙もそのなかにいた。
いよいよ、両親の棺が霊柩車へと運ばれ、火葬場へ出発しようとしたとき、決して泣かないと決めていたはずの勝弥の眼がしらが、かあっと熱くなってきた。
(ちきしょう!泣かない!泣かない!)
そう強く思えば思うほど、目から涙が溢れそうになるのを勝弥は堪えていた。
そのとき、
勝弥の隣から、彼の左手をぎゅっと強く握る手があった。
その手は
亜里沙だった。
そんなに仲が良かったわけでもなかったのに、彼女は彼の手を強く握りながら、隣でぽろぽろと涙を流しながら泣いてくれていた。
その手が暖かくて、優しくて…
勝弥はなんとか、そのとき涙をがまんできた。
1人になってしまった彼は、それからは「強くなりたい、強くならなきゃいけない」と考えるようになり、そんな彼は周りから孤立していった。
自分のなかで解消できない思いを周囲にぶつけ、頑なになっていくうちに彼は地元で一番の不良と呼ばれるようになっていた。
そして、目の前に現れる奴らを倒していくうちに、彼が望まないまま暴走族の初代総長として祭り上げられ、
いまでは、
良家としての家柄もなく勉強嫌いな彼が、旭が丘の防衛担当としてAクラスの生徒という地位も与えられていた。
それによって、商店街を含めた旭が丘高校周辺から彼らは完全に排除されてしまった時期があった。
そんなパトロール強化が緩和される先月まで彼らは、ここ商店街を通ることもできず、旭が丘を快く思っていなかった。
当時、旭が丘生徒会内でも、この武力行使について賛否分かれたが、綾小路の「適正な自衛権の行使であり、自校の生徒の安全を守ることは生徒会の義務だ」とする意見に最終的には生徒会議会での強行採決が行われ、防衛部隊によって芝久代学園の生徒は、ここ商店街においても行動を制限せざるをえない状況に追い込まれていた。
それを不満としている者は芝久代学園には多数いた。
「お前らが仲良くイチャついてんの見てたら、腹立ってきてな。」
そんな芝久代学園の連中から、健介はかろうじて亜里沙を庇い、男たちと亜里沙を遮るように間に立った。
しかし、5対1。特別ケンカが強いわけでもない健介にとって絶対絶命のピンチだった。
そんな健介と亜里沙を旭が丘高校防衛担当の真鍋勝弥は少し離れた歩道橋の上から見ていた。
勝弥も亜里沙たちとは小学校の頃からの同級生だった。
放課後、いっしょに遊んだりしたことはなかったが、勝弥には忘れられない亜里沙との思い出があった。
彼は小学3年生のときに両親を突然の事故で亡くし、その後、親戚の家に引き取られた。
彼の両親の葬儀では当時のクラスメイトも参列し、亜里沙もそのなかにいた。
いよいよ、両親の棺が霊柩車へと運ばれ、火葬場へ出発しようとしたとき、決して泣かないと決めていたはずの勝弥の眼がしらが、かあっと熱くなってきた。
(ちきしょう!泣かない!泣かない!)
そう強く思えば思うほど、目から涙が溢れそうになるのを勝弥は堪えていた。
そのとき、
勝弥の隣から、彼の左手をぎゅっと強く握る手があった。
その手は
亜里沙だった。
そんなに仲が良かったわけでもなかったのに、彼女は彼の手を強く握りながら、隣でぽろぽろと涙を流しながら泣いてくれていた。
その手が暖かくて、優しくて…
勝弥はなんとか、そのとき涙をがまんできた。
1人になってしまった彼は、それからは「強くなりたい、強くならなきゃいけない」と考えるようになり、そんな彼は周りから孤立していった。
自分のなかで解消できない思いを周囲にぶつけ、頑なになっていくうちに彼は地元で一番の不良と呼ばれるようになっていた。
そして、目の前に現れる奴らを倒していくうちに、彼が望まないまま暴走族の初代総長として祭り上げられ、
いまでは、
良家としての家柄もなく勉強嫌いな彼が、旭が丘の防衛担当としてAクラスの生徒という地位も与えられていた。