その手が暖かくて、優しくて
せっかく夏も終わり、毛の長いシーズーにとっては
散歩しやすい季節になった。
大好きだった散歩道にはコスモスの花も咲き始めたというのに
ハナはもう散歩に行けない
呼吸に合わせ大きくお腹が動くだけ
目はうつろだし、泣いてるみたいに潤んでいる。
ハナは小さなシーズー犬
瑞希が小さかったころから「家族」だった。
臆病で、甘えんぼで、わがままで、
世話のやける瑞希の妹だった。
なのに、彼女より早く年をとって、そして早く死んじゃう。
その日、瑞希が学校から急いで家に帰ったとき
すでに「ハナ」の命は消えかかっていた。
きれいだった毛はボサボサで…
つらそうで…、苦しそうで…見てるのがつらい…
瑞希には、ただ、目の前のハナが可哀そうで
可哀そうで
涙が止まらなかった。
苦しそうに息をしているハナに
「ハナ…もう…いいよ…
ハナがこんな苦しい思いする理由なんてないよ。
悪いのは私だよ
最近はあまり散歩にも連れて行ってあげなかったし
一緒に遊んであげたりもしなかった。
友達と一緒にいたくて、ハナと一緒にいてあげなかった…」
神様…
神様…お願いします
悪いのは私なんです。
だから
神様…
お願いします…
ハナをこれ以上苦しめないでください。
そのとき瑞希は祈ることしかできなかった。