その手が暖かくて、優しくて
綾小路の私設軍隊にも隊長がいた。彼の名前は大田原権三(おおたわらごんぞう)
金で雇われた傭兵が多いこの軍隊で、旭が丘高校の三年生だった。

彼は中学の頃から、この辺りでは有名な不良で、ケンカが強いと周囲から恐れられていた。
そんな彼は…

真鍋勝弥が大嫌いだった。

同じようにケンカが強い不良なのに…
同じ18歳なのに…

神様は罪だ…

この「作り」の違いは一体なんなんだ!!
権三も勝弥も身長は185cmくらい。同じ身長なのに、勝弥の顔は権三の半分のでかさしかない。
明らかに生物学的にありえない。

しかも、あのやろうは前髪さらさらさせやがって…

もともと天パーだった権三の髪はチリチリだった。
「さらさら前髪」に憧れた彼はストレートパーマをかけてみたが、そもそも彼の顔に「さらさら前髪」は全く似合わなかった。
そこで、元に戻したり、またストパーかけたり、さらには髪の色を変えたり、脱色したりしているうちに、よほど頭皮に負担がかかったのか…

18歳にして、彼はハゲかかっていた。

これだけでも大きな差なのに、最も決定的なことは

やつの名前は「かつや」。
それに対して、なんだ…?「ごんぞう」って…
物心がついてから、彼は、そんな名前を付けた親の良識を疑った。

しかも、昨日、彼が駅前を歩いていたら、制服着ていたにもかかわらず「社長、いい娘いますよ!寄ってきません?5,000円ぽっきりでサービスしますよ!」とポン引きに声をかけられた。
「ばかやろう!俺は高校生だ」と答える権三に、
「またまたぁ…御冗談を…」と言われ、思わず、そのポン引きを殴ってしまった。

そんな傷心を抱えて、川沿いに行ったら勝弥の野郎…
女の子と手つないで川見てやがった。

くそ!くそ!くそ!

俺も…そういうこと、してみたい…

意外と権三はロマンチストだった。
彼はずっと携帯小説のような恋愛に憧れていたのだった。




一方、日々劣勢となっていく選挙予想に苛立つ瑞希のところへ、金森が現れた。
「待ってたよ。逆転の策があるって、何?」

風紀委員にスパイとして潜入していた金森から「綾小路に勝つための作戦がある」と連絡を受けて、いつもの理科準備室で瑞希は彼と待ち合わせていた。

「はい、これまでの潜入調査で、一つ分かったことがあります。いまのところ状況証拠だけですが…」

「それで、何をどうするのか、はっきり聞かせて」

金森は、そこで彼が考えた作戦を瑞希に打ち明けた。
それを聞いた瑞希は

「いいじゃん!それ、やってみよう。」彼女は金森の提案を受け入れた。



その夜、やはり華麻呂はバスローブ姿で部屋にいた。

最近、彼の日課はお気に入りの「フットマッサージ機」
購入代金はちゃっかり生徒会費で落としていた

かなり気持ち良くて
「フットマちゃん」
…て名前まで付けちゃっていた。

彼がマッサージ機に両足を入れ、スイッチを入れると

ウィーン…ウィーン…
低い機械音が華麻呂の部屋の中に響く

ときに強く
そして優しく足を揉んでくれて、
特にふくらはぎの辺りが最高に気持ち良く…

思わず彼は
「フットマちゃん…ありがと…」

ウィーン…ウィーン…
(いえいえ…仕事ですから)

「今日も忙しかったよ…でも、なんとか選挙は勝てそうだ。」

ウィーン…ウィーン…
(お疲れさま。リラックスしてね)


「フットマちゃん…」


華麻呂とマッサージ機との「愛」が生まれた瞬間だった。




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