その手が暖かくて、優しくて
その深夜、亜里沙たち5人は学校の近くにある公園に集合していた。

「なんなの!亜里沙!その頭につけてるネコ耳?」

ネコ耳が付いたカチューシャをして集合場所にやって来た亜里沙に瑞希が言った。

「いや…アタシのなかでは、密かに忍び込むって、ネコのイメージだから、形から入ろかなって…」

「あのね…」

呆れる瑞希をしり目に、なぜか亜里沙は、この深夜の潜入にノリノリだった。

「じゃあ、もう一度、作戦を確認します」
金森が校舎見取図を地面に広げた。

「会計係の金田の部屋までのルートは、こうです。」
見取図を指差しながら金森の説明が続く。

他の4人は、その見取図を囲むように覗き込んだ。

「正門に着いたら、その陰に健介さんが隠れて待機、外部からの出入りを見張ってください。
他は夜間も鍵が開いている教職員用玄関に向かう。
ここまで敵の見張りはいないが、守衛室が玄関脇にあるから、守衛が校内の見廻りに出ているすきに突破します。」

(うわ「突破」だって!映画みたい!)

不安そうに聞いてる健介や、緊張した面持ちで聞く瑞希と佐藤とは異なり、亜里沙は能天気にワクワクしていた。

金森からの説明は続く。
「守衛が校内の見廻りに出る時間は、いつも0時前後。その後30分ほど守衛室は無人になります。
そこから金田の部屋がある4階への階段は、ここと…」
金森は見取図に書かれてある階段の位置を指差しながら、
「ここです。いずれも見張りが一人ずついます。そこで佐藤さんは、こっちの階段から上がり、そこの見張りを倒したら、その場に見張りとして待機してください。くれぐれも音をたてないように。」

「わかった」

俺を含めた3人は、もう一方の階段から上がります。そこの見張りは俺が倒すから、後は亜里沙さんがそこに残って見張りをしてください。」

「りょーかいです!」

「見張りをしているのは綾小路の私設軍隊の連中が持ち回りの当番制でやっています。予定では今夜の見張りは比較的、強いやつはいないはずです。特に要注意な大田原も夕刻には下校したのを確認しています。」

(「おおたわら」て…なんか重たい名前)
権三のことを、よく知らない亜里沙は漠然と、そんなことを考えていた。

「あとは俺と瑞希さんで金田の部屋に入り、パソコンからデータを盗み出します。それと行動中の個々との連絡はスマホのメッセージアプリを使います。以上ですが、何か質問は?」

4人は黙ったまま頷いた。
いよいよ作戦開始である。


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