その手が暖かくて、優しくて
正面から見る瑞希は、ドラマやバラエティ番組で、彼がたくさん見てきた「ぶるる」そのものだった。
緊張が止まらない金田は額の汗を拭きつつ、
「これから、どこに行こうか?」と瑞希に尋ねた。

それを聞いた瑞希は、
口を外したストローを指で遊びながら、上目遣いで言った。

「アタシ…金田君の部屋に行きたいな…」




金田の頭の中がサンバカーニバルとなっていた頃

体育館の半分のスペースを使って行われる校内裁判法廷の準備が急ピッチで行われていた。必要な机や椅子は既に運びこまれてあり、後は、それらを並べるだけだった。
開廷は17時ちょうど

「金森、大丈夫なんだろな?」
その様子を見守りながら尋ねる清宮公正に金森は

「ええ!瑞希さんは必ずやってくれます。」



やがて、校内裁判開廷まで、あと一時間となった16時頃、
金田家では玄関に待たせている瑞希のことを気にしながら、金田が二階の自室を片付けていた。
辛うじて、一見、片付いたし、これ以上、瑞希を玄関に待たせるわけにもいかない。そう考えた金田は階下にいる瑞希を迎えに玄関に向かった。
そして、「さあ!どうぞ!」

一方、瑞希は、
(あと一時間で裁判が始まっちゃう!急がなきゃ)
時計を気にしながらも、焦る気持を抑えて作り笑顔で、
「じゃあ!お邪魔しまーす!」


その頃、華麻呂は落ち着きなく足を震わせながら、生徒会長室にいた。
思いがけない清宮の告発によって、彼はこれから被告人として出廷しなくてはいけない。
「くそっ!くそっ!」
苛立つ彼は繰り返し、呟く。
そこへ、
「綾小路君、ちょっと気になることが…」

そう言いながら、彼の私設軍隊の一人が華麻呂のいる生徒会長室に入ってきた。
辞めた大田原の後任として隊長となった者である。

「なんだ?」

そこで華麻呂が彼から聞いた話は、
今日、金田が亜里沙の親友である瑞希と駅前のファストフード店で会っていたのが目撃されており、さらに二人は、その店を出た後、金田の家に向かったとの情報だった。

「なんだと!それは何時頃だ」
「二人が目撃されたのは15時頃だそうです。」

今から1時間前、それなら、二人は間もなく金田の家に着くころだ。

「金田のやつ…バカが…」

今日という日に亜里沙の親友が金田に近づくのは、なにか狙いがあるに違いなかった。

「大至急、集められるだけの不良どもを集めて金田の家に向かわせろ!金はいつもの倍を出してやる!急げ!」


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