その手が暖かくて、優しくて
これは、最後のチャンスだ。

瑞希は金田が出ていくや否や、立ち上がって、再び部屋の中を探しまわった。

(落ち着け!落ち着け!瑞希!絶対、ここにあるはず…)

そのとき、2つ並べられた棚の片方が、前に突き出ていることに気づいた。

「………!!」

その棚の後ろ、壁との間を覗き込むと、

あった!

そこには、3冊の帳簿と、まだ未処理の伝票らしきものや、メモ書きがクリップで閉じられたものが押し込まれてあった。

瑞希は急いでそれらを、持ってきた手提げバッグに押し込むと、窓から外の亜里沙たちに合図を送った。



「やったぁ!瑞希!」亜里沙たちが、思わず、そう叫んだとき
その金田の家の周囲に、続々と不良たちが集まってきた。
華麻呂の指示によって、ここに集められた彼の私設軍隊だ。


一方、目的の物を手に入れた瑞希は金田の部屋を出た。
階段を駆け下りると、目の前に金田が、

「どうしたの?トイレ?」

「いや…その…なんていうか…金田君いろいろ取り込んでいるみたいだし…」

「そんなことないよ!お願い!もう少し待ってて!」
そう金田が言ったとき

「あら!どーも、金好の母です~!」
金田の母親が部屋から顔を出した。
(あら…また随分と可愛い娘じゃない…意外とやるわね…金好も)

「うわ…お兄ちゃんの彼女さんって美人!ぷるるみたい!」
金田の妹まで出てきた。

「あ…どうも…お邪魔してます…」作り笑顔で、そう答えた瑞希に金田の母は

「いやね…親のアタシが言うのも何なんですけど…、この子は、こんなふうに見た目はイマイチですけどね、本当に優しい子なんですよ。この前もアタシの誕生日にね…」

(やばい!)瑞希は思った。



(この話は…長くなる!)

そう判断した瑞希は、
「すいません。ちょっと今日は急用を思いだしたんで…」
そう言いながら、玄関に向かった。



その頃、亜里沙たちが見守る金田家の外に集まる綾小路の私設軍隊の数は、どんどん増えていった。

その様子を見ていた佐藤が言った。
「まずい…早くここから脱出しないと…」


しばらくして…

「ま…待ってくれ!」

金田の声が聞こえ、その直後に玄関のドアが開いて、瑞希が飛び出してきた。

しかし、彼女を捕えようと、集まって来ていた華麻呂の私設軍隊の不良たちが彼女の行く手を阻もうと動いた。

瑞希は
「え!なんなの!これ!」

すぐに、瑞希の周りは不良たちだらけになった。

そんな瑞希を守ろうと佐藤たち龍神会と亜里沙も瑞希のほうへ駆け寄る。



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