その手が暖かくて、優しくて
亜里沙の腕を掴んだ男は
「その袋を、こっちに渡すんだ!」

「いや!」亜里沙は、そう叫んで拒んだが、男の手がバッグにかかる。

だが、突然、亜里沙の目の前で、その男が倒れた。

「………?」それに驚いた亜里沙が顔を上げると、



「男が寄ってたかって女の子をいじめてんじゃねぇ!」

その男を倒したのは、権三だった。

「大田原君!」

「こら!勝弥!しっかりしろ、亜里沙ちゃんを守るんだろ!」

「権三…」勝弥は権三のほうを見て、少し口元に笑みを浮かべた。

勝弥だけでもやっかいなのに、元軍隊長の権三までがいる。
綾小路私設軍隊が少し引いた。

その合間をぬって、なんとかそこから亜里沙を逃がそうと勝弥と権三は奮闘したが、やはり数の力の差は否めない。

「次から次と出てきやがる!」

「あーいい加減、手が痛いよ」

そんなことを言いながら、さすがは最強コンビ、迫りくる敵を次々と倒していく。

だが、これでは勝弥の言うとおり、きりがない。
なかなか亜里沙を脱出させられないことに2人は苛立っていた。だが、

そんな綾小路の大軍勢のなかに、100台近いバイクが割り込んできた。

「すいません!勝弥さん、遅くなりました。」
祐希が「NORTHERN-WOLF」を引き連れて、駆けつけてくれたのだ。

「亜里沙さん!こいつらは僕らが、ここでつぶしときますから、行ってください!」

祐希が乗ってきたバイクに跨り、勝弥が叫ぶ。

「亜里沙!後ろに乗れ!」

勝弥と亜里沙は一気に、その場を脱出した。

「いけぇ!勝弥ぁ!」そんな二人に向かって権三が叫んだ。



その頃校内裁判法廷では、華麻呂が清宮に反論をしていた。
「流用したなんて、そんな証拠どこにあるんだ?生徒会費については、ここにある帳簿どおり適正に管理され、学校や生徒のために使われ、それ以外の目的で引き出されたり使われたりしたことは一切ない!」

そんな華麻呂に、清宮は黙ってしまった。
(くそ…状況証拠なら揃っているのに…、あいつが流用していることは間違いないんだが…)

焦りと、悔しい気持ちで、ただ黙り込むしかない清宮と金森の向かいの席で、華麻呂は余裕の表情だった。


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