その手が暖かくて、優しくて
生徒会長選挙
あと一週間で大型連休となる4月のある朝、
新緑の葉を透かすほどの強い日差しが、空から降り注がれていた。
「え!何これ!」
登校した亜里沙は生徒用玄関の下駄箱の配置が変わっていることに気付いた。
下駄箱の間隔が狭くなっており、生徒が靴を履き替えたりするスペースが狭くなっていたのだ。登下校のピーク時にはただでさえ混雑していたのに、これでは手前で順番待ちになりかねない。
その一方でAクラスなど上位クラスのスペースが広くなっていた。
そんななかでCクラスのスペースは比較的、広く確保されており、生徒会現政権が中間層への人気取りのためやったとしか考えられなかった。
全ては連休明けに実施される生徒会長選挙に向けてであろう。
「亜里沙~見てよ!これって酷くない?」
すっかり様変わりしてしまった生徒用玄関に驚いている亜里沙にEクラスにいる友人の中村瑞希が声をかけてきた。
「あ!瑞希、おはよう」
「そんなことより、とにかく見てよ!これ!」
瑞希に腕を引っ張られてEクラスの下駄箱スペースの方に行った亜里沙は
「うわ…!」
そこは人間一人がやっと通れるくらいのスペースしかない。
これはEクラスを標的として差別することで上位クラスからの支持を得ようという作戦に違いない。
それにしても…
「ひどいなぁ…」
思わず、そんな言葉が亜里沙の口から出た。
「でしょ!でしょ!こんなに狭かったら靴履き替えらんないよ~」
「生徒会もやることが、だんだん露骨になってきてるね」
そこへ、玄関外からハンドマイクを使った綾小路の声が聞こえて来た。
「皆さん、おはようございます。本日、正式に生徒会長選挙に立候補の届け出をいたしました綾小路華麻呂です。引き続き学校運営を任せていただき、より良い学校にしていく所存です。」
「ふん!なーにが『より良い学校』よ!」
亜里沙の隣で瑞希が小声で呟いた。
もともと瑞希は亜里沙より一つ上のCクラスだった。
しかし、校則違反が発覚して先月からEクラスへ編入されてしまったのだ。
ここ私立旭が丘高校校則では、学校に持ち込んではいけない物が細かく決められている。
スマホは朝礼時に担任教師に提出し、下校前に返してもらう。
また、菓子類の持ち込みも厳禁であった。
瑞希は、これで校則違反を犯してしまった。
大の甘いもの好きの彼女はキャンディを所持していたところを風紀委員によって現行犯で告発されてしまったのだった。
新緑の葉を透かすほどの強い日差しが、空から降り注がれていた。
「え!何これ!」
登校した亜里沙は生徒用玄関の下駄箱の配置が変わっていることに気付いた。
下駄箱の間隔が狭くなっており、生徒が靴を履き替えたりするスペースが狭くなっていたのだ。登下校のピーク時にはただでさえ混雑していたのに、これでは手前で順番待ちになりかねない。
その一方でAクラスなど上位クラスのスペースが広くなっていた。
そんななかでCクラスのスペースは比較的、広く確保されており、生徒会現政権が中間層への人気取りのためやったとしか考えられなかった。
全ては連休明けに実施される生徒会長選挙に向けてであろう。
「亜里沙~見てよ!これって酷くない?」
すっかり様変わりしてしまった生徒用玄関に驚いている亜里沙にEクラスにいる友人の中村瑞希が声をかけてきた。
「あ!瑞希、おはよう」
「そんなことより、とにかく見てよ!これ!」
瑞希に腕を引っ張られてEクラスの下駄箱スペースの方に行った亜里沙は
「うわ…!」
そこは人間一人がやっと通れるくらいのスペースしかない。
これはEクラスを標的として差別することで上位クラスからの支持を得ようという作戦に違いない。
それにしても…
「ひどいなぁ…」
思わず、そんな言葉が亜里沙の口から出た。
「でしょ!でしょ!こんなに狭かったら靴履き替えらんないよ~」
「生徒会もやることが、だんだん露骨になってきてるね」
そこへ、玄関外からハンドマイクを使った綾小路の声が聞こえて来た。
「皆さん、おはようございます。本日、正式に生徒会長選挙に立候補の届け出をいたしました綾小路華麻呂です。引き続き学校運営を任せていただき、より良い学校にしていく所存です。」
「ふん!なーにが『より良い学校』よ!」
亜里沙の隣で瑞希が小声で呟いた。
もともと瑞希は亜里沙より一つ上のCクラスだった。
しかし、校則違反が発覚して先月からEクラスへ編入されてしまったのだ。
ここ私立旭が丘高校校則では、学校に持ち込んではいけない物が細かく決められている。
スマホは朝礼時に担任教師に提出し、下校前に返してもらう。
また、菓子類の持ち込みも厳禁であった。
瑞希は、これで校則違反を犯してしまった。
大の甘いもの好きの彼女はキャンディを所持していたところを風紀委員によって現行犯で告発されてしまったのだった。